ワイヤレス給電 Wireless Power Transfer
ワイヤレス給電とは?
ケーブルをつながずに電化製品や車を装置に近づけるだけで充電(給電)できる技術です。
スマートフォン、イヤホン、電動歯ブラシなど、消費者向け電化製品では、小電力のワイヤレス給電技術が使われた商品が世に出回っています。
皆さまの生活に欠かせないECサイトも、その倉庫ではワイヤレス給電技術が使わ始めています。
倉庫内の棚から商品をピックアップし、梱包する場所まで移動する 無人搬送車(AGV)は、 充電を気にせず稼働できます。
これからのワイヤレス給電
- より大電力を給電できるようになり、場所を選ばず、複数の電化製品給電へ
- 屋内から屋外に利用エリアを拡大し、停止中の給電から移動中給電へ
と富士ウェーブは考えています。
規格と安全性
電波法
富士ウェーブは、無線通信への与干渉、電波資源の効率的な利用を確保する電波法を順守し、開発を行っています。
人体防護指針
富士ウェーブは、電波の人体に対する安全性の基準である電磁界の人体防御指針を順守し、開発を行っています。
ワイヤレス給電 給電方式 WPT Schemes
主要な給電方式
磁界結合方式 | 電界結合方式 | マイクロ波方式 | |
---|---|---|---|
送受信構造 | コイルを利用して、電力を伝える。「電磁誘導の法則」を用いた方式 | 電極平板を利用して電力を伝える。「静電容量結合」を用いた方式 | マイクロ波やレーザー光を利用して、電力を伝える方式 |
特徴 | ・大電力伝送が可能 ・位置ズレに弱い | ・位置ズレに強い ・遠方空間へ伝わりにくい | ・長距離伝送が可能 ・伝送効率が低い |
最適な給電方式を選択
それぞれの方式については一長一短があり、磁界結合方式、電界結合方式については、近距離での給電に有効で、マイクロ波方式は遠距離での給電が検討されています。
ワイヤレス給電を利用する目的や利用環境に最適な技術を選択することが重要です。
富士ウェーブでは、それぞれの方式を熟知したメンバーがそろっており、最適な方法を選択し、開発を進めています。
EVワイヤレス走行中給電 Dynamic Wireless Power Transfer
環境に優しくCO2削減に役立つ電気自動車(EV)
EVは電気を利用して走行するため、従来のガソリン車と比較して、走行時のCO2排出量が大幅に少なくなっています。
製造時のCO2排出量は、搭載するバッテリーの観点から、EVの方がガソリン車よりCO2を排出しますが、LCA(Life Cycle Assessment:製品の製造から廃棄までのすべての工程における環境負荷)では、EVはガソリン車に比べ20~30%CO2排出量が少なく、環境に優しくなっています。バッテリー容量を減らすことができれば、更にCO2の削減が可能になります。
ガソリン車とEVのLCAにおけるCO2排出量の比較
2022年 国内燃料別新車(乗用車)販売台数の比較
環境面では有利なEVですが、日本自動車販売協会の発表によれば、2022年の燃料別の新車販売台数では、わずか1.4%のシェアしかありません。
EVの普及を妨げているのは
- 車体価格が高い
- 充電スポットが普及していない
- 充電に時間がかかる
- 航続距離が短い
上記4つの要因といえます。
EVにワイヤレス走行中給電できるようになると…
EVにワイヤレスで走行中給電できるようになると、EV普及を妨げてきた4つの要因が解決し、一気にEV普及が進むことが期待できます。
「電界結合方式」をワイヤレス走行中給電に採用
Capacitive Coupling
ワイヤレス走行中給電にふさわしい方式の検討
最も一般的なワイヤレス給電方式である磁界結合方式を活用したワイヤレス走行中給電の実験が研究機関や企業で進んでいます。
富士ウェーブは、本当にワイヤレス走行中給電にふさわしいのは、どの給電方式か
- 漏洩電磁界の範囲※
- 給電間隔
- 電極の素材
- 電極間の横ズレ
の4つに着目し、検討を行いました。
※電子機器内部で発生する電磁界が一定量漏洩し、その漏洩した電磁界が伝わっている空間の範囲
「磁界結合方式」によるワイヤレス走行中給電
<1. 漏洩電磁界の範囲>
範囲が大きく、異物発熱のリスクがある
漏洩電磁界の範囲が大きく、車という遮蔽物がない場合、更に範囲が広がり、金属異物が入った場合、発熱の怖れがある
<2. 給電間隔>
飛び石給電
数メートルごとに道路に埋設されたコイルと、同数の電源が必要
<3. 電極の素材>
コイルの素材の銅は重く、価格が高い
<4. 電極間の横ズレ>
電極間の横ズレに弱い
もし、磁界結合方式でワイヤレス走行中給電を行うと…
着目点 | 磁界結合方式の課題 | 課題No. | |
---|---|---|---|
安全性 | 漏洩電磁界の大きさ | ・飛び石のコイル上を通るわずかな時間に大電力を送電するため、漏洩電磁界が大きくなる ・そもそもの物理現象として磁界結合方式は漏洩電磁界が大きい | ① ② |
異物へのリスク | ・金属異物が電化道路に入った場合、発熱するため危険 | ③ | |
コスト | インフラ敷設・ 保守コスト | ・飛び石にコイルを設置するため、多数の大電力電源が必要 ・電化道路に敷設するコイルは価格が高い | ④ ⑤ |
車両自体のコスト | ・飛び石で充放電を繰り返すため、バッテリー寿命が短くなる ・車両に設置するコイルは価格が高い | ⑥ ⑦ | |
省エネ | 道路から車への給電 | ・送受電電極間の横ズレに弱いため少しでも横にズレると受電できない ・飛び石のコイル上を通るわずかな時間に大電力を送電するため受電効率が悪い | ⑧ ⑨ |
走行する車の電費 | ・車両に設置するコイルは重いため、電費が悪くなる | ⑩ |
磁界結合方式には、ワイヤレス走行中給電で解決すべき10の課題があり、
課題解決に向け、電界結合方式でも同様の検証を行いました。
「電界結合方式」によるワイヤレス走行中給電
<1. 漏洩電磁界の範囲>
範囲が小さい
漏洩電磁界の範囲が小さく、車という遮蔽物がない場合でも漏洩電磁界の範囲が小さい
<2. 給電間隔>
連続給電
1台の電源で数十メートル「連続的」に給電走行が可能
<3. 電極の素材>
アルミは軽く、価格が安い
<4. 電極間の横ズレ>
電極間の横ズレに強い
「電界結合方式」をワイヤレス走行中給電に採用すると…
「電界結合方式」なら「磁界結合方式」の弱点を克服する可能性があります。
「電界結合方式」は3つの条件をクリアする、最も適した給電方式
富士ウェーブは、「安全性」、「コスト」、「省エネ」の観点で「磁界結合方式」でクリアできなかった課題を解決できる「電界結合方式」をワイヤレス走行中給電に採用します。
富士ウェーブはワイヤレス走行中給電の実証実験に向け、準備を進めています。
ワイヤレス走行中給電の実証実験
現在、富士吉田市でワイヤレス走行中給電の実証実験の準備を進めています。
今後もコア技術である「ワイヤレス給電技術」を活用し、各種モビリティ(自動車、電車など)分野や家電分野などに積極的に展開し、本分野のパイオニアを目指します。
今後10年間で、本分野での市場規模を2兆円まで拡大していくと共に、次世代型都市構想実現を見据え、カーボンニュートラルに最大限貢献していきたいと考えています。
富士ウェーブの強み Strength
あらゆる給電方式に精通したメンバー
富士ウェーブでは、小型家電からモビリティまでワイヤレス給電に関するすべての給電方式に精通したメンバーが揃っており、それぞれ独自の技術を有しています。(特許:約350件 論文:約600件)
それぞれの方式には一長一短がありますが、ワイヤレス給電を利用する目的や利用環境に最適な方式を選択することが重要と考えており、給電方式に精通したメンバーがそろっているからこそ最適な方式を選択し、開発を進めることが可能です。
- 粟井 郁雄 取締役
IEEEライフフェロー、山口大学名誉教授 - 大平 孝 取締役
IEEEライフフェロー、豊橋技術科学大学名誉教授・特任教授 - 増田 満 取締役
名古屋大学未来材料・システム研究所 客員准教授 - 横井 行雄 顧問
自動車技術会ワイヤレス給電システム技術部門委員会幹事 - 佐々木 邦彦 顧問
名古屋工業大学未来通信研究センター特任教授 - 山本 真義 技術顧問
名古屋大学未来材料・システム研究所 教授
弊社取締役 大平がNHKの海外向け番組「NHK WORLD-JAPAN」の取材を受けました。
『Special Episode : Laying the Groundwork for Wireless Power Transfer』というテーマでワイヤレス走行中給電の可能性に触れています。
期間限定公開ですので、ぜひご覧ください。
産学官の提携
富士ウェーブでは、ワイヤレスモビリティ事業の産学官連携を進めています。
EVには電界結合方式を採用し、富士吉田市での実証実験から社会実装、更に富士北麓エリアのスーパーシティなどへの発展を目指します。
企業、学術機関、自治体の産学官連携を結び、構想実現に向け取り組みを進めています。
山梨県、豊橋技術科学大学と連携協定を締結
山梨県、甲斐市等と5者連携協定を締結
富士吉田市と包括連携協定を締結
ワイヤレスで自由な暮らしを
研究成果を活かし、サステナブルな社会を実現
本社 :山梨県富士吉田市上吉田4961-1
大津事業所:滋賀県大津市大江2-20-9 サブライムビル3F
山口研究所:山口県宇部市常盤台2-14-1 テクノセンタ401号室